京扇子の作り方 プロの技が連携して作る上質な工芸品 其の一
京都の伝統的モノづくりのスタンダード、分業制。プロの連携によるモノづくり
京都の伝統的なモノづくりは分業による連携作業がスタンダードで、着物、西陣織、仏具など一つの物を作るのにそれぞれの工程で沢山の職人の手が入り完成を目指します。
扇子も例に漏れず、それぞれの工程のプロが連携して一つの扇子を作ります。
全部で87工程と数えられる作業を分業で完成を目指す京扇子。
- 1.骨、紙
- 2.扇面加工
- 3.折り
- 4.附け
それぞれ職場が分かれている職人の仕事にフォーカスしてザックリと京扇子の作り方を紹介しようと思います。
少し長くなりますので素材の加工とそれを使って完成に近づける工程を分けて紹介させて頂きます。
其の一
1.扇骨について。
2.扇面紙について。
扇骨
扇子の根本的な材料となる扇骨。
いきなりですが、京扇子という名前なので、全てを京都で賄っているのかというと実はそうではありません。
国産扇子の扇骨の90%以上が、滋賀の安曇川町と新旭町で作られたもので、扇骨が京へ行けば京扇子となり、 江戸へ行けば江戸扇子になります。
昔は京都にも骨を作る職人、職場があったのですが、時代と共に減少し、今では京都の一軒と滋賀からの骨で賄われています。
滋賀と京都の関係は隣接県として蜜月でこの国産扇骨を使わないと京扇子とは認められません。
扇骨は両外側のしっかりした2枚を親骨、内側の薄い骨を仲骨と呼びます。
親骨18工程、仲骨16工程にも及ぶ分業体制になっています。
親骨、仲骨、いずれにも3〜5年育った良質の竹が使われます。
親骨に使われる竹は、硬度、柔軟性のちょうど良い物がなかなか無く、材料の工面に苦労があり、他府県から仕入れることも多いのですが、扇子に適した竹かどうかを見極めるのに沢山の経験や知識がいるので、他産地で簡単に出来ることではありません。
より詳しい内容はこちらに詳しく載っていますのでご興味ある方は是非ご覧下さい。
扇面紙
扇面を支える紙もただの和紙ではなく、それ専用の紙が用いられています。
扇子は構造上、骨の両側から2枚の紙を貼り合わせて作ると思われがちです。
しかし実は、紙の真ん中を割いてそこに骨を刺すという工程で制作されます。
なので扇子専用の特殊な紙を作るところから制作は始まります。
扇の紙の部分は、3枚の和紙を糊で貼り合わせて作ります。
まず芯紙と呼ばれる和紙を真ん中にして、表と裏に皮紙とよばれる紙を貼ります。
この芯紙という紙が薄く、裂けやすい構造になっている特殊な和紙でそのような仕様が得意な土佐和紙が使用されています。
その外側から貼り合わせる皮紙は扇子の形体で決まります。
舞扇子などの大きな扇子の場合、閉めた状態の美しさや強度のため厚めの皮紙が仕様されたり、時には5枚、7枚と貼り重ねる事によってちょうど良い分厚さに調整されます。
基本的には骨の数が多い扇子は分厚い紙を使用すると仕上がりがゴワゴワしてしまい、美しいフォルムにならないので薄い紙を使用します。
その仕事はとても細かく0.01m単位で調節されていて熟練の感覚が求められます。
貼り合わせ乾燥させたのちに、型をあてて、扇の形に切り抜きます。
その工程に興味がある方はこちらをご覧下さい。
まとめ
いかがだったでしょう。
京扇子という名前が付いているので全てを京都で賄っているように思えますが、沢山の他産地の専門家との連携がありながら、それを最終的に扇子にするノウハウを持つ産地だと言うことが分かると思います。
ここからは京扇子の京扇子たる部分となって行きますので其のニの方も引き続きお楽しみ頂ければと思います。
また、よくご質問頂く「京扇子」って結局何が違うのという疑問に関しては、これだけではあまり伝わりませんね。
その魅力についてはこちらの記事で触れさせて頂いていますので気になる方はご参照下さい。