伝統工芸京扇子|金彩扇子作家米原康人 京もの認定工芸士である金彩扇子作家「米原康人」が、印刷では表現が難しい扇子本来の美しさ、格好良さを追求したオリジナル扇子を制作・販売しています。箔、紙、骨、扇面加工、折り、付け、全て伝統工芸技術で仕上げた上質なハンドメイド。普段から愛用されている方、馴染みのない方もお使い頂けるよう豊富なラインナップをご用意しています。

京扇子の作り方 プロが連携して作る上質な工芸品 其のニ

京都の伝統的モノづくりのスタンダード、分業制。プロの連携によるモノづくり

 

京都の伝統的なモノづくりは分業による連携作業がスタンダードで、着物、西陣織、仏具など一つの物を作るのにそれぞれの工程で沢山の職人の手が入り完成を目指します。

 

扇子も例に漏れず、それぞれの工程のプロが連携して一つの扇子を作ります。

全部で87工程と数えられる作業を分業で完成を目指す京扇子。

 

  1. 1.骨、紙
  2. 2.扇面加工
  3. 3.折り
  4. 4.附け

 

それぞれ職場が分かれている職人の仕事にフォーカスしてザックリと京扇子の作り方を紹介しようと思います。

 

骨、紙の部分は其の一の記事で触れておりますので合わせてご参照下さい。

 

 

其のニでは扇面加工から完成に向けて触れていこうと思います。

 

長いなと感じた方は、最後のまとめに流れだけ書いておきますのでそちらまでスクロール下さい。

 

 

扇面加工

 

扇子の扇面加工は骨と一体になる前、平地の時点で行われます。

 

 

私はこの部門に属している職人なのですが、ここでなされる加工が扇子の顔になります。

 

実はこの部門は、産地オリジナルの表現だけでなく、新たに開発された印刷、染色技術などテクノロジーの発達、様々なカルチャーの影響を受けた意匠を取り込みながら日々進歩し続けているのでこれぞ京都という定義はありません。

 

京扇子の定義でもここを伝統的技法に限定してはいません。

 

そうは言ってもやはり他ではなかなか出来ない独自の守り伝えている事、表現方法がございます。ここでは京都らしさを持つオリジナルの表現、技法を取り上げて行こうと思います。

 

大きく技法の特徴を掴むと

1.色引き、染色

2.箔押し

3.描き絵

4.スクリーン

といった感じになります。

 

1.色引き、染色

 

 

最近は、インクジェットやオフセットの印刷が使われる事も多いですが、今でも日本画で使うような顔料などを膠でとき、刷毛で引いていくことから色引きと名付けられています。

染めも色引きも数百枚もの紙に同じ色を出したり、前回の物と色合わせするのに熟練の技術を必要としますが、今ではそういう部分はデジタル処理できる印刷技術の方が優秀で、その個体差を味と慈しんでくれる需要に対して機能しています。

 

また、霞という、扇子独特のの曲線と刷毛目を使った柄は手で引いた方が雰囲気が出るので重宝されています。

 

2.箔押し

 

扇子は、神事、仏事、芸事などの作法に取り込まれている事が多く、色彩として下地や紋押しなどで金を使う事が多かった背景があり、箔押しの専門部署があります。

こちらも、蒸着の箔や、ホットスタンプなどの技術によりかなり縮小していますが、祈りなどを起源にしているので、人の手で作ることを好んだり、独特の質感を持った表現を出来たりするので京都の扇子の独自技術として生き続けています。

技術的な特徴としては、砂子、野毛など蒔絵に使われる技術から無地で並べていく箔押しまで幅広い表現方法をもっていて、後に折りという工程を経ても剥がれないという点です。

 

3.描き絵

こちらも手描き、100枚なら100枚同じ物を描かないといけない所が扇子の絵師の難しいところなのですが、一枚描いてスキャンした物を印刷する事が出来る現代、原画を日本画家の方や現代美術家の方が担当することも多くなり非常に人数が減っています。

 

4.スクリーン

シルクスクリーンの型を幾重にも組み合わせて図柄を作ります。

浮世絵の色彩ほど繊細な物ではありませんが、浮世絵が版を重ねて作られるように、その文化を踏襲している技法といえます。

印刷とは違う風合いが出せて、何枚も同じ物が作れるということで今でも需要のある技法となっています。

 

折り

 

ここからは、扇子にしか無い工程になってきます。

折りというのは平地の扇面に見覚えのある折り目をつけ、骨を通す穴を通す作業になります。

 

まず、絵柄が折り目をつける衝撃で割れたら飛んだりしてしまわない様、衝撃を緩めるための水分を含ませます。

この水分の含ませ具合が数値などに現れない経験などノウハウの部分になってきます。

前記の扇面加工で取られた技法によってその含水率は変わってきます。

 

その部分が出来ると今度は折り目をつけていきます。

ここで登場する折り型は、折りの職人さんが、自前で作る専門の道具です。

 

 

紙の大きさ、骨の数に応じた2枚の折り型の間に湿らせた紙を挟み折り込んでいきます。

 

折り目のついた紙が乾くと次は中骨を差し込むための空間を作る差し竹を行います。

 

地紙の説明で触れたとおり芯紙が割れやすくなっており、2層に分かれるように竹を使って空間を開けます。

 

その後、折りぐせのついた紙を折りたたんだまま、裁断用の枠にまとめて入れて、万切り包丁を使い扇子を所定の規格に合う大きさに切りそろえる事で折り地の完成となります。

 

ここからは仕上げ、骨と紙を合わせる附けという作業になります。

 

附け

 

附けは扇子としての格好を決める最後の仕上げとなる部分です。

 

この部分は職人によって完成品の形の好みやクセが出やすいのと設備投資がほぼ必要ないということもあり、販売店が内製化している事も多いです。

 

工程を順を追って見ていくと、まず中骨の長さを丁度良い長さに切り揃えます。

薄い紙を使う間数の多い紙の場合、透けて骨が見えるのでしっかり揃えて行きます。

 

それが出来ると折地の先を塗ったり、箔を押したり加飾します。

これは、扇子を閉じた状態の時に上部まで綺麗に見せる日本の扇子の細かいこだわりの部分になります。

 

ここまでいくと骨と紙を一つにする準備が整います。

 

折加工で折地に通した細い穴に空気を通し中骨を通せる状態にすると骨に刷毛でのりをつけ穴に骨を通していきます。

 

この工程を中附けといいます。

 

 

扇子を作る工程で最もそれらしい動きになるので良く映像で使われる部分です。

 

この中附けは、紙や骨の分厚さ、状態によってのりの濃さや量を変えたり、細かい調整は熟練の感覚でなされます。

 

 

また、骨の数、間数が多い形の扇子にのりが乾く前に全ての骨を差し込むのは相当な慣れが必要となって来ます。

 

これが出来ると一度乾かしてのりの水分でゴワついた折地を拍子木で叩き形を整えます。

 

骨と紙が一つになり、扇子らしくなって来た後は、扇子を綺麗な形に整えるキモになる作業を迎えます。

 

 

タメと言われる作業で、親骨に熱を加え少しアールをつけることによって閉じた時にパチンと音のする締まりのいい扇子にしていきます。

 

熱の加え方は職場それぞれで、写真のようにヤカンの蒸気を使う所もあれば、アイロンを使う場合もあり、電熱ストーブなどを使う所もあり、様々です。

 

その後、親骨の先の長さを揃え、親骨を折地に接着。

セメと言われる輪っかで固定しのりが乾くと完成です。

 

まとめ

いかがだったでしょう?

長くなりましたのでかいつまんで最後におさらいしておきます。

 

京扇子は、一本の扇を作るのに、複数(物によって人数は前後する)の人が関わります。

 

その工程は

 

竹を扇子の骨に成形する。

 

扇骨として仕上げる。

 

紙を合わせ、扇型に切り抜く。

 

扇面の加飾加工をする。

 

扇面に扇子の折り目をつけ、骨を通す隙間を作る。

 

紙と骨を一つにし形を整え完成。

 

というお話を長々と詳しめにさせて頂きました。

 

それぞれの工程で熟練の感覚が必要となってきますので、デジタル化されて来ている工程でもある程度の扇子作りの知識が入っていないと上手くいかないという所が扇子の産地として地位を保っている要因なのかなと思います。

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